2011年の中国、日本、韓国の各プロリーグは、戦力が均衡、また注目選手の多い、見どころの多い戦いとなりそうだ。2007年は浦和レッズ、2008年はガンバ大阪(ともに日本)、2009年は浦項スティーラーズ(POHANG STEELERS)、2010年は城南一和天馬(SEONGNAM ILHWA CHUNMA、ともに韓国)と東アジアのプロリーグは4年連続でAFCチャンピオンズリーグ優勝クラブを輩出している。2011年は各国でどのクラブがタイトルを獲得するのか、注目チームを中心に各リーグの状況を見てみよう。
2010年優勝の山東魯能らに「最強」の昇格組・広州恒大が挑む
4月に開幕する中国サッカー協会スーパーリーグ(CSL)は2010年、ブランコ・イバンコビッチ(Branko IVANKOVIC)新監督を迎えた山東魯能(SHANDONG LUNENG)が18勝9分3敗の成績で2年ぶりのリーグ優勝を果たした。新シーズン前にリーグ戦歴代最多得点者の元中国代表FW李金羽(LI Jinyu)が現役引退したものの、リーグ得点ランキング2位の17得点をたたき出した中国代表FW韓鵬(HAN Peng)をはじめ、同8得点のレバノン代表MFローダ・アンタル(Roda ANTAR)ら、リーグトップの59得点(2番目に多い上海申花は44得点)をたたき出した攻撃力は今年も健在。懸念の最終ラインに中国代表のCB汪強(WANG Qiang)を補強するなど連覇への準備を進めてきた。
オランダ人指揮官アリー・ハーン(Arie HAAN)監督の下、2010年に過去最高のリーグ2位となった天津泰達(TIANJIN TEDA)は中国代表通算出場数が100試合を超える名CB李偉峰(LI Weifeng)を韓国の水原三星ブルーウィングス(SUWON SAMSUNG BLUEWINGS)から獲得。AFCチャンピオンズリーグ(ACL)初戦では、李偉峰を中心とした堅守で韓国Kリーグ2位の済州ユナイテッド(JEJU UNITED FC)に1-0で完封勝利を収めるなど好発進している。
2010年、20ゴールで得点王とリーグMVPに輝いたコロンビア人FWリアスコス(Duvier RIASCOS)擁する上海申花(SHANGHAI SHENHUA)は中盤戦まで首位に立ちながら後半失速しているだけに年間を通して安定した戦いができるかどうかがカギとなりそう。シリア代表DFダッカ(Abdulkader DAKKA)ら新戦力の活躍などでCSL初優勝を目指す。
また、ACL初出場でいきなりJリーグ王者の名古屋グランパスを下した杭州緑城(HANGZHOU GREENTOWN)は名古屋戦で大活躍した22歳の新星、中国人FW巴力 (BARI Mamatil)がクローズアップされる存在に。2010年に中国代表主将のCB杜威(DU Wei)、栄昊(RONG Hao)ら新戦力の力で前年のリーグ15位から4位へ大躍進を遂げたチームは2011年、一気に初Vを果たすか。
その他、注目されるのが2009年リーグ優勝の北京国安(BEIJING GUOAN)と元日本代表監督のフィリップ・トルシエ(Philippe TROUSSIER)氏を新監督に迎えた深圳紅鑽(SHENZHEN RUBY)。そして大補強を敢行した広州恒大(GUANGZHOU EVERGRANDE)だ。特に広州は長く中国代表のエースを務めてきたMF鄭智(ZHENG Zhi)と2010年中国サッカー協会甲級リーグ(2部相当)で得点王となった中国代表FW郜林(GAO Lin)というビッグネーム2人に加え、今オフにはセルビアの強豪、パルチザン(PARTIZAN)からブラジル人FWクレオ(CLEO)、またブラジル人MFムリキ(MURIQUI)、中国代表DF馮瀟霆(FENG Xiao Ting)、中国代表DF張琳凡(ZHANG Linpeng)らが新たにラインナップに加わった。昇格1年目から優勝争いの中心になるかもしれない広州など、熾烈な戦いが繰り広げられそうだ。
優勝争いは王者・名古屋グランパス、鹿島アントラーズ、ガンバ大阪の三つ巴の争いか
日本のJリーグは2010年優勝の名古屋グランパスと天皇杯覇者の鹿島アントラーズ、そして2010年2位のガンバ大阪が優勝争いの中心か。2010年、就任3年目のストイコビッチ(Doragan STOJKOVIC)監督の下で初優勝を果たした名古屋は2011年、日本代表のレフティーMF藤本淳吾(FUJIMOTO Jungo)や、日本が優勝した第16回アジア競技大会で得点王を獲得した新人FW永井謙佑(NAGAI Kensuke)を加え、2連覇へ向けて戦力を充実させた。MFダニルソン(Luis DANILSON Cordoba Rodrigues)が怪我のため長期離脱したものの、2010年のリーグMVPであるGK楢崎正剛(NARAZAKI Seigo)や得点王を獲得したFWケネディ(Joshua Blake KENNEDY)、DF田中マルクス闘莉王(TANAKA Marcus Tulio)らは健在。開幕戦は横浜F・マリノスと1-1で引き分けたものの、覇権に最も近い存在と言えそうだ。
2010年、連覇が3でストップした鹿島は、大黒柱だったブラジル人FWマルキーニョス(MARQUINHOS)が退団するなど、メンバーを約10人入れ替える大改革を敢行。主力の半数が30歳代へ突入したことも懸念されるチームは、日本代表MF本田拓也(HONDA Takuya)やDFアレックス(ALEX Antonio De Melo Santos)ら新戦力の活躍や、FW大迫勇也(OSAKO Yuya)ら若手の台頭がタイトル奪還へのカギとなりそうだ。
ガンバ大阪は成長著しい18歳MF宇佐美貴史(USAMI Takashi)が最注目。ドイツの名門、バイエルン・ミュンヘン(BAYERN MUNCHEN)が獲得に乗り出したと報じられた“天才アタッカー”は得意のドリブルからゴール、アシストで存在感を放つ。また日本代表の司令塔、MF遠藤保仁(ENDO Yasuhito)や元韓国代表FWイ・グノ(LEE Keun Ho)、新加入のブラジル人FWアドリアーノ(ADRIANO)ら、実力者がそろうチームは十分に優勝する力がある。
2010年、2部からの昇格1年目で3位と大躍進を遂げたセレッソ大阪は守備陣が安定しているだけに、新加入の韓国代表MFキム・ボギョン(KIM Bo Kyung)やMF乾貴士(INUI Takashi)らを中心とした攻撃陣が昨年同様の得点力を発揮できるか。MF中村憲剛(NAKAMURA Kengo)擁する川崎フロンターレはリーグトップクラスの攻撃力が武器。MF中村俊輔(NAKAMURA Shunsuke)がキャプテンを務める横浜F・マリノスも上位進出を伺う。移籍組では清水エスパルスへ加入した元日本代表FW高原直泰(TAKAHARA Naohiro)、元アジア王者の浦和レッズへ加わったブラジル人MFマルシオ・リシャルデス(MARCIO RICHARDES)が注目。また2部優勝の柏レイソルはセレッソ大阪のように昇格1年目から躍進するか。その他、オーストラリア代表とのAFCアジアカップ決勝で決勝点となるスーパーボレーを決めたサンフレッチェ広島FW李忠成(LEE Tadanari)や、前人未到の3年連続得点王獲得を目指すジュビロFW前田遼一(MAEDA Ryoichi)ら日本代表のアジアカップ優勝メンバーの活躍も見逃すことはできない。
開幕戦で王者撃破の水原三星ブルーウィングスが優勝争いの 中心的存在に
新規参入した光州FC(GWANGJU)を加え16チームで争われる韓国Kリーグは、Jリーグと同じく3月5日に開幕。6日との2日間に行われた開幕節8試合には史上最多となる計19万3,959人が詰めかけた。開幕戦で2010年のリーグ王者・FCソウル(FC SEOUL)を2-0で破った水原三星ブルーウィングス(SUWON SAMSUNG BLUEWINGS)が充実している 。2010年の韓国FAリーグを制している水原は今オフ、韓国代表の守護神、GKチョン・ソンリョン(JUNG Sung Ryong)をはじめ、韓国代表のレギュラーボランチMFイ・ヨンレ(LEE Yong Rae)、韓国代表MFチェ・ソングッ(CHOI Sung Kuk)、元クロアチア代表DFマト(MATO)ら大型補強を敢行。主力級を大量に加えたチームは3年ぶりとなるリーグタイトル奪取へ好発進している。
開幕戦で苦杯をなめたソウルは2008年のアジアMVP選手であるウズベキスタン代表MFセルベル・ジェパロフ(Server DJEPAROV)やFWデヤン(DEJAN Damjanovic)らリーグナンバー1の攻撃陣。さらに2010年FIFAクラブワールドカップで得点王となったコロンビア人MFマウリシオ・モリーナ(Mauricio MOLINA)を加えた。この強力攻撃陣を韓国代表GKキム・ヨンデ(KIM Yong Dae)や新加入の元韓国代表DFキム・ドンジン(KIM Dong Jin)らが支える。
2009年の14位から2位へ大躍進を遂げた済州ユナイテッドFC(JEJU UNITED FC)は、アシスト王の韓国代表MFク・ジャチョル(KOO Ja Cheol)がボルフスブルク(WOLFSBURG、ドイツ)へ移籍。エースが抜けたものの、2010年に17ゴールを挙げてリーグMVPに輝いたFWキム・ウンジュン(KIM Eun Jung)やリーグ最少失点を実現したDFホン・ジョンホ(HONG Jeong Ho)中心の守備陣で上位定着を目指す。
2010年3位の全北現代モータース(JEONBUK HYUNDAI MOTORS)は2年ぶりの優勝を狙う。全北は2009年リーグ得点王でMVPでもある元韓国代表FWイ・ドングッ(LEE Dong Gook)が大黒柱。クロアチア人FWクルノ・ロブレク(Krunoslav LOVREK)やMFエニンヨ(Enio Oliveira Junio)ら破壊力十分の攻撃陣で攻め勝つか。
2010年のACLチャンピオン、城南一和天馬(SEONGNAM ILHWA CHUNMA)はGKチョン・ソンリョンやMFモリーナら主力の多くが移籍して苦しい布陣。ACLで最優秀選手となったオーストラリア代表DFササ・オグネノフスキ(Sasa OGNENOVSKI)やFWラドンチッチ(RADONCIC)の活躍が重要となりそうだ。
その他注目は2009年ACL優勝の浦項スティーラーズ(POHANG STEELERS)や蔚山現代ホランイ(ULSAN HYUNDAI HORANG-I)などの戦いぶり。個人では13年間在籍した水原から全南ドラゴンズ(CHUNNAM DRAGONS)へ新天地を求めた元韓国代表GKイ・ウンジェ(LEE Woon Jae)や、その同僚でアジアカップ韓国代表の10番を背負った19歳FWチ・ドンウォン(JI Dong Won)が注目。仁川ユナイテッドFC(INCHEON UNITED FC)のFWユ・ビョンス(YOO Byung Soo)には2年連続得点王獲得の期待がかかる。
Text:gekisaka.jp/Kondansha
Photo:Getty Images,AFLO