驚喜、再建、脱皮。今回のEAFF東アジアカップ2013における中国代表の活躍はこんな言葉で形容できるかもしれない。
中国にとって大会での初戦となった日本との試合では、2点ビハインドから追い付き、3対3のドローに持ち込んだ。第2戦では、ホームで戦う韓国にも全力のプレーで挑み、スコアレスドロー。最後のオーストラリア戦では、一時、4対1でオーストラリアを突き放す等、圧倒的な攻撃力を見せた(試合の最終スコアは4-3で中国が勝利)。オーストラリアの試合が行われた後、日本が韓国に勝利したため、中国は2位で大会を終えている。
中国はEAFF東アジアカップ2013で十分に力を発揮し、その活躍は内外で評価された。だが、中国サッカーを長きにわたって発展させていくためには、現状に満足することなく、今、何をすべきかをしっかり考える必要がある。
代表チームの監督に世界の名将を据えようとした中国サッカー協会の試みは思うように進まず、若手選手中心のタイに1対5で完敗。この敗戦で中国サッカーは大きな危機に直面した。しかし、ここで現状をしっかりと見つめなおしたことがよかったのか、「危機」を「機会」に転換することに成功した。
現在、代表チームの監督代行を務める傳博は、中国サッカー協会から任期を11月まで延長されており、今後はチームを率いて残されたアジアカップ予選に挑むことになる。傳博の就任で中国男子サッカーが根本的に変わったというわけではなく、チーム内の士気や結束力が高まったのが大きな要因だと推測されるが、ピッチ上でのチームのパフォーマンスは十分な変化を見せた。そして、中国国内の人材こそ、中国サッカー再生のカギなのではないかと思わせられる。
国内外のピッチにおける成績と知名度で広く注目を集めているのが「国内人材」の旗手、広州恒大である。クラブ上層部が国内トップクラスの選手を集め、そこに助っ人として優秀な外国籍選手を招き入れる。世界でも名を知られたマルチェッロ・リッピを監督につけたことで、実力は急速に高まった。このような投資によって、中国サッカーが改めて活力を与えられていると言える。
さらに、これが代表チームの選手の間の以心伝心の度合いを高める上でもかなり役立っていることは疑いない。広州恒大だけで8名が代表選手に選ばれており(孫祥、張琳芃、馮瀟霆、秦昇、鄭智、郜林、趙旭日、栄昊)、ほとんどがレギュラーである。この点ではスペインに少し似ているのかもしれない。スペインの近年の成功はチームの中心的選手が基本的にバルセロナに所属していることが要因の一つとも言われている。代表選手の多くが同じクラブチームでプレーしているために、ピッチでの意思の疎通が非常にスムーズという理論だ。
外国籍選手への過度の依存や競争力不足を心配するのには理由がある。長い目で見た場合に、そのようなやり方が中国サッカーに利益をもたらすとは思えないからだ。競争力のある国内リーグ戦も必要だが、リーグ戦を勝ち抜くことや、国際試合で好成績を収めることばかりを急ぐのではなく、(外国籍選手への)巨額投資の一方で、ユースに対する投資にも目を向ける必要がある。ただ、国内のリーグ戦で絶対的な優位を占めている広州恒大の存在が、他の国内リーグのクラブにとって目標や刺激となっているのも事実だ。
EAFF東アジアカップ2013でのパフォーマンスだけで、中国サッカーが短期間で大きな進化を遂げたとか、谷底から力強く這い上がったと考えるのは時期尚早だろう。しかし、EAFF東アジアカップ2013での成功は、自分の力で奮起して初めて、中国サッカーは真に立ち上がることができるのだということを証明したと言える。今後はユースチームをはじめとした底上げから着手することが大事だろう。